個人消費が日本経済に与える影響

世界経済を左右するテーマ、QE2、ソブリンリスク、インフレ問題、そして民主化ドミノ。世界経済が直面する問題を総点検。資源高騰も悩みの種に。問われる各国のかじ取り。

消費は所得に連動

通常の景気後退は、最終需要の減少によってもたらされる。リーーマンーショツク後の景気後退も、外需の急激な減少によって引き起こされた。ところが、今回の景気の落ち込みは国内の供給制約が主因である。そのため、リーマンーショツク後に景気の2番底懸念が広がったのに対し、今回は最終需要の減少リスクはそれほど意識されていない。わが国を巡る外需環境は基本的に良好で、被災した工場の操業が復旧しさえすれば、企業の生産水準は元に戻るという安心感がある。各社の操業計画などから判断すると、年内には震災前の生産水準に復帰することが期待できる。

 

もっとも、個人消費に限っては、大幅な需要減少がみられた。震災後の個人消費の落ち込みは、リーマンーショツク後よりも深刻であった。FXで苦戦した3月の家計調査の実質消費額は前年同月比8・5%減。とりわけ、自動車、娯楽サービス、外食、洋服などの支出が大幅に減少した。供給側の統計をみても、3月の遊園地・テーマパークの売上局は前年同月比50%減、ゴルフ場が同15%減。主要50社の国内旅行取扱額も同31%減と厳しい落ち込みである。

 

個人消費は国内総生産(GDP)の6割近くを占めるため、今後の景気にも大きな影響を及ぼす。では急減した消費需要は、今後どのような推移をたどるのだろうか。趨勢的にみれば、個人消費は所得水準に連動して動いている。短期的
には乖離が生じることがあるものの、数年単位でみれば、必ず所得に見合った消費水準に収束している。

 

足元の動きを確認すると、1〜3月期の名目消費支出(帰属家賃を除ぐ)は前期比0.6%減少した。一方、名目雇用者報酬は同0.2%の増加と、消費支出とは逆方向に動いた。所得と消費の乖離は、4〜6月期にさらに拡大すると見込まれる。消費支出は、4月後半から持ち直しに転じたものの、4月前半までの落ち込みがあまりにも大きかったため、4〜6月期は3四半期連続の減少になりそうだ。一方、雇用者数と現金給与総額の動向を踏まえれば、4〜6月期の雇用者報酬は微減にとどまると見込まれる。両者の動きから判断すると、足元の消費支出の減少は、所得の減少に誘発された景気循環的な動きではなく、消費マインドの萎縮による一時的な現象とみることができる。

 

もちろん、所得環境が今後悪化に転じた場合は、雇用者報酬が消費水準まで低下することによって、足元の低い消費水準が正当化されてしまう。では、今後の所得環境をどうみるか。

 

雇用者報酬は、企業が生み出した付加価値の労働者への分配であることを勘案すれば、今後の企業の生産水準が大きなカギを握る。当面は、部品・原材料不足から鉱工業生産が下振れしやすい状態が続くため、雇用者報酬にも減少圧力がかかる可能性がある。しかし、工場の操業再開の前倒しが相次ぐなか、鉱工業生産は遅くとも年末には震災前の水準に復帰するとみられる。そのため、企業の立場からすれば、今あわてて雇用や給与を大きく減らす必要性は小さい。したがって、所得環境が大きく崩れる事態は想定しにくく、雇用者報酬はほぼ横ばい圏内で推移すると予想される。

 

雇用者報酬が大きぐ減少しないのであれば、消費者はやがて自らの消費水準が低すぎることに気付くだろう。今後、萎縮した消費マインドが改善するにしたがい、個人消費は所得に見合った水準に向かって増加し始めると予想される。