米国銀行の株下落の背景にCDO訴訟リスクあり

世界経済を左右するテーマ、QE2、ソブリンリスク、インフレ問題、そして民主化ドミノ。世界経済が直面する問題を総点検。資源高騰も悩みの種に。問われる各国のかじ取り。

米国銀行の株下落の背景にCDO訴訟リスクあり

米国大手金融機関の株価が、冴えない動きとなっている。ゴールドマンーサックス株とモルガンースタンレー株は、4月29日から5月27日にかけて約8%下落。シティグループ株も安い11.11%の下落を記録した。

 

同期間の主要株の動きを示すFX&S&P500指数が約2%の下落だったことからすると、不振が際立つ。2011年1〜3月期決算を無難に乗り越えた後だっただけに何か起きたのか。要因の1つとされているのが、債務担保証券(CDO)の組成・販売をめぐる司法訴訟の可能性である。

 

発端は、連邦議会の上院常設調査小委員会が4月13日にウォール街と金融危機・金融崩壊の解剖学」と題する64ページにも及ぶ報告書を公表したことであった。これは住宅バブルに関係した金融機関などを対象に、2年間にわたる調査結果をまとめたものである。報告書は、CDOを組成する投資銀行が、投資家との利益相反はないとしながら、実際にはCDOに組み込まれている住宅ローン担保証券(RMBS)の価値が下がることによって投資銀行側に利益が上がるポジション(持ち高)を作っていたとして、厳しい批判を展開した。

 

なかでも、ゴールドマンについては「ハドソン」アンダーソン」「ティンバーウルフ」(いずれもCDOにつけられた名称)など具体的な案件を取り上げてポジションを分析した。また、ドイツ銀行についても、チーフトレーダーが今後の価値低下が見込まれる住宅口ーンを用いてCDOを組成したと指摘している。

 

同委員会は、4月下旬に4回の公聴会を開催した。一方で、委員長を務めるカールーレビン上院議員が、監督当局に対して報告書で説明された金融取引の全てを調査するよう要請するなど、マスメディアへのアピールを試みたが、当初はそれほど注目されなかった。

 

ところが5月3日にエリックーホルダー司法長官が、上院の報告書内容を吟味していると発言。12日にはロッチデール証券のリチャードーボーブ金融セクター担当アナリストが、司法省による刑事訴訟の可能性を理由にゴールドマン株の投資断を「中立」から「売り」  むに引き下げた。これによって金融株全般に対するセンチメントが悪化した。

 

議会や司法省の動きは、米国の世論・政治家の間で、ウォール街に対して金融危機の責任と「ペナルティ」を求める声が根強いことを示している。CDOについては昨年4月に証券取引委員会(SEC)がゴールドマンのCDO案件「アバカス」について提訴、7月にゴールドマン側か5.5億ドルの和解金を支払うことで決着した経緯がある。

 

その後、他のCDO案件あるいは他の投資銀行についてSECは告発を行ってこなかった。だが、ここにきて投資家との利益相反を厳格に解釈する司法省からの訴訟リスクが新たに顕在化してきたと言える。上院報告書は、他にも不動産融資における詐欺的な貸し出しなど広範な批判を展開している。法的リスクが当面、米国金融株の重石となる可能性があるといえよう。